歯周病

よく見られる症状

  • 口が臭う
  • 歯肉が赤い
  • 歯石がついている
  • 歯がグラグラする
  • 歯が抜けた
  • よだれが多い
  • くしゃみが出る

歯周病とは

歯周病は口の中の細菌と、体の免疫のバランスが崩れて歯周組織が壊れる感染症です。
口臭があったり、歯肉から出血が見られたらすでに歯周病になっています。しかし早期に治療を行い、デンタルケアを実施することで歯を失う確率をさげることができます。


犬の3歳以上の約80%が歯周病と言われていたのは数十年前の話で、今では1歳齢の犬の約90%は歯周病と言われ始めてきました。特に小型犬では歯周病の罹患率が高く、6歳を超えて初めて歯科処置をした場合、抜歯しなくてはならないくらいひどくなった歯が見られるケースが多々あります。そのため2〜3歳で最初の歯科治療をお勧めしています。
歯科治療は、動物病院での治療だけでなくホームケアも重要ですので、一緒に頑張って続けていきましょう。


口の中の状態や年齢にもよりますが、歯周病が進んでいても、治療後にホームケアを実施し、定期的な麻酔下での検査治療がうけられるなら歯を残す提案をしています。どの程度の歯周炎の歯なら残して歯磨きできるのか、それとも抜歯した方がいいのかは、歯科処置の前にあらかじめ話し合って決めておきます。かなり高齢で今後麻酔をかけられない場合は、歯周病の歯を残すことで将来辛い思いをすることがあるため、抜歯を提案することがあります。
また歯科処置をすると抜歯されると認識している方もいますが、逆に治療を早く実施しないと抜歯しないといけない状況になってしまいますので、早めに治療して噛める歯を残していきましょう。


年齢のせいで寝ている時間が増えてきたり、散歩の時間が短くなったりと感じていたら、実は歯が原因のこともあります。
ひどい歯周病の場合、その不快な歯を抜くことで、喜んで散歩中に走るようになったり、美味しそうにフードを食べれるようになったと報告してくださることがあります。ぜひ口の中を観察してみてください。

治療の流れ

  • 事前診察と検査

    歯科治療は、動いてしまうことで適切な検査と治療ができないため、必ず麻酔下で拡大鏡を用いて行います。そのため通常の手術と同じように麻酔前の全身の検査が必要です。
    年齢や疾患によって検査する内容は変わります。歯科治療の1〜2週間前に全身の検査を実施します。

    麻酔前の全身検査の例
    1~6歳 身体検査、血液検査、レントゲン検査(胸部、腹部)¥22,000~
    7歳以上 身体検査、血液検査、胸部・腹部のレントゲン検査、腹部エコー、必要により心エコー¥32,000~

  • 治療当日

    歯科レントゲンを含めた歯科検査を実施した後、必要な治療を決め実施します。
    口腔内検査によって、歯肉炎のみ認められた場合は歯冠部(歯肉縁上)のスケーリングとポリッシングを実施し、歯周炎が認められた場合は、歯周ポケットの治療が必要となります。
    歯冠部(歯肉縁上)と歯根部(歯肉縁下)のスケーリングを実施します。
    深い歯周ポケットに対しては歯周外科治療(フラップ手術)を実施することもあります。
    ※歯周外科治療とは、歯肉を切開して歯根部の歯垢歯石を除去し、歯根を滑らかにして歯肉を縫合する治療のことです。
    歯周病が根尖まで及んでいたり、歯周病治療を実施しても持続的なホームケアが難しく、歯周炎が進行することが予測されるときは抜歯を選択します。最後にポリッシング(歯の研磨)をして終了です。

  • 治療後

    1~2週間後に口腔をチェックします。
    後は3〜6ヶ月ごとに定期検診をして、必要に応じて定期的にクリーニングを継続します。

症例

歯周病が進行した結果、引き起こされる病気やリスク

・口腔鼻腔瘻
上顎犬歯の内側などに深いポケットができ、鼻腔と交通します。症状はくしゃみ、鼻汁、鼻出血など。
・外歯瘻、内歯瘻
皮膚や、口腔粘膜に瘻管(膿が排出される管)ができます。眼の下の皮膚が腫れたり、かさぶたができたら外歯瘻の可能性もあるため、口の中をチェックしてみましょう。
・下顎の骨折
小型犬では、下顎骨の重度歯周病により骨が脆くなり折れることがあります。
・肝臓、心臓、腎臓病が歯周病に関係して認められたという報告もあります。

軽度歯周病

軽度歯周病処置前イメージ 軽度歯周病処置後イメージ

中程度歯周病

中程度歯周病処置前イメージ 中程度歯周病処置後イメージ

(数本は重度歯周病により抜歯)

重度歯周病1

重度歯周病1処置前イメージ 重度歯周病1処置後イメージ

重度歯周病2

重度歯周病2処置前イメージ 重度歯周病2処置後イメージ

よくある質問

Q歯周病の原因は何ですか?
A歯周病の直接的な原因は、歯垢(プラーク)です。歯垢は、歯に付着している細菌の塊で、ネバネバとしたバイオフィルムを形成します。バイオフィルムは薬などでは除去しにくいため、歯ブラシなどで除去することが大切です。また、歯石や歯並び(乳歯遺残)などは、歯周病のリスクファクターとなるため、早期に治療する必要があります。
Q歯周病を予防する方法を教えてください。
A犬猫の歯周病を予防するには、定期的な歯ブラシでの歯磨きが大切です。歯の表面の歯垢を除去し続ける必要があるため、歯垢を除去しにくい製品は、歯周病の予防効果は低いです。ホームケアでは十分な予防はできないため、動物病院で定期的なクリーニングを受けましょう。
Q歯周病を予防できるフードやおやつを教えてください
Aヒルズのt/dなど一部のフードは、噛むことにより歯垢歯石の蓄積を減らす効果が期待できるものがあります。また、歯磨きガムを与えることによっても同じ効果があります。しかし、ガムを選ぶときは、歯に食い込むくらいの弾力があり、歯の側面が擦れるようなガムを与えないと効果は低く、逆にガムの硬さによっては歯が折れる原因になることも非常に多いので気をつけましょう。
米国の獣医歯科医師による獣医口腔衛生委員会(VOHC)が認定した歯磨きガムを使ってみるのもいいかもしれません。これらの商品にはVOHCのマークがついています。同時に、歯ブラシによる歯磨きや定期的な歯科検診など、予防策を総合的に取り入れることが歯周病予防には効果的です。

歯科診療のご予約・お問合せはこちら

03-6404-6049