歯の破折
よく見られる症状
- 片方の歯でものを噛む
- フードを食べこぼす
- 硬いものを食べない
- よだれ
- 口を気にしてこする
- 口を触られるのを嫌がる
- 食欲低下
歯の破折とは
犬猫で比較的よく見られる歯の外傷で、歯が折れたり割れたりすることをいいます。原因のほとんどは、硬いものを噛んだことにより起こり、実際その硬いものは飼い主さんが知らずに与えています。よくあるものとしては、ひづめ、豚耳、鹿の角、おもちゃ、デンタルガムなどで、ペットショップで売られているデンタル製品でも歯が折れることがよくあります。
歯の破折から歯髄が露出した場合、激しい痛みを感じるはずですが、ほとんどの飼い主さんは気が付きません。だた、よくよく観察すると硬いものを噛まなくなった、食べる時間が長くなった、おもちゃで遊ばなくなったなど、口の不快感を訴える仕草が見られることがあります。露髄した破折歯を放置すると、歯髄炎、歯髄壊死、根尖周囲膿瘍から目の下や、顎が腫れることがあります。
歯の破折の治療
破折した歯をどのように治療するかは、破折した歯の歯周病の程度、歯髄が露出しているかどうか、乳歯なのか永久歯なのか、健康状態、年齢、今後デンタルケアができるかどうかなどによって治療法が決まります。
子犬の時期に乳歯が歯髄まで破折した場合は、これから生えてくる永久歯を守るため、早めに抜歯します。
抜歯には麻酔が必要なため、乳歯は絶対に折らないようにしましょう。
また永久歯の歯髄に達する破折の場合は、神経を抜く治療まで必要となります。
修復困難な歯根の破折や、飼い主さんが修復を希望されない場合は、抜歯をします。
歯髄まで達していない歯冠破折の場合は、コンポジットレジンで修復します。
治療の流れ
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事前診察と検査
歯科治療は、動いてしまうことで適切な検査と治療ができないため、必ず麻酔下で拡大鏡を用いて行います。そのため通常の手術と同じように麻酔前の全身の検査が必要です。
年齢や疾患によって検査する内容は変わります。歯科治療の1〜2週間前に全身の検査を実施します。
麻酔前の全身検査の例
1~6歳 身体検査、血液検査、レントゲン検査(胸部、腹部)¥22,000~
7歳以上 身体検査、血液検査、胸部・腹部のレントゲン検査、腹部エコー、必要により心エコー¥32,000~ - ↓
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治療当日
当日は絶食で、お昼前にご来院いただき、お預かりいたします。
お昼〜夕方の時間帯に歯科処置を実施、麻酔をかけてから、口腔内の検査を行い(口の中にも麻酔をかけて痛くないように処置します。)歯科レントゲンを含めた、歯科検査を実施します。
露髄していない歯冠破折
エナメル質が失われ、象牙質が露出した場合は、象牙質に細菌が侵入する可能性があるため、表面をコンポジットレジンで覆います。もしレントゲン検査等でこの破折した歯に問題が生じていた場合は、他の処置が必要となります。
露髄した歯冠破折
歯髄が露出していた場合、痛みが歯髄への感染により、歯髄炎、歯髄壊死に至ります。
そのため、感染した歯髄を除去し、ガッタパーチャで充填する抜髄根幹充填を行います。
※破折歯の治療は、歯周病の程度や他の歯科疾患、年齢などを考慮し抜歯が適応となることもあります。
症例
歯冠破折
よくある質問
- Q歯の破折の原因は何ですか?
- A硬いものを噛んだり、犬同士の喧嘩、交通事故、高所からの落下などが挙げられますが、ほとんどが硬いものを噛むことで破折しています。破折の原因となるものとしては、ひづめ、硬いデンタルガム、骨、豚耳、アキレス腱、鹿の角、ヒマラヤチーズ、プラスチックのおもちゃなどです。
- Q歯の破折を予防する方法を教えてください。
- A破折の原因のほとんどは、飼い主さんがお店で買ってきて与えるもので起きているため、歯の健康のためとか顎が鍛えられるというようなことが記載されている商品が、逆に歯を折って口の環境を悪化させてしまうことがあります。そのため、そのような商品を与えなければほとんどの破折は予防できます。
- Q歯が折れてそのまま放っておいてもよいでしょうか?
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A破折の種類には色々あり、その状況によって経過が変わります。特に歯髄(歯の神経)が露出している場合は、激しい痛みを感じます。
よく観察すると、痛みを生じている歯ではフードやおもちゃを噛まなくなったり、口周りを舐めたりというような症状がみられるかもしれません。露髄した歯を放置すると、歯髄炎や歯髄壊死が起こり、歯根に膿瘍が形成され、歯の根元付近の皮膚が腫れたり、排膿することもあります。 - Q保険は適用されますか?
- A保険適応になるケースが多い印象ですが、保険会社によって対応が変わりますので、事前に加入している保険会社にご確認ください。